故テツ西山(西山徹)氏の考案フライパターン、TNポッパー。
出会いは「ザ・フィッシング」と言うテレビの釣り番組。西表島でフライフィッシングでクロダイもとい、チヌ(確かに黒い鯛ですがチヌと言いたい)を釣る内容で、番組中、テツ西山氏が使っていました。あの、素晴らしくカッコいい、いぶし銀のチヌがフライで、しかもトップで釣れる、という内容に衝撃の思いを抱きました。ナンヨウチヌとかいうチヌの亜種でトップでも釣れる獰猛な性質を持つそうで、本州のチヌないしキビレでも釣れるのではないか、と期待しました。当時はチヌをルアーで釣るメソッドは確立しておらず、釣れても偶発的なものでしたから。
フライでバスを釣ることにも興味があったワタシは早速フライショップに赴き、4個、購入しました。
さあ、初めてのフライによるトップウォーターです。張り切ってリザーバーに釣行しました。
いかにも釣れそうな、流木や中洲のあるポイント。キャストに自信のないワタシは#8のフライタックルでチャレンジ。
周りはルアーマンがちらほら。
ウェーダー、フローティングタックルベストを着用しつつ、フライロッドを手にしている酔狂な釣り人なぞワタシだけです。ルアーマンが何か汚物を見るかのような目でワタシを見ます。ルアーマンにもワタシが正統派フライフィッシャーマンの道を踏み外した落伍者、異端者であることが分かるのでしょう。それともルアーとフライ、どっちつかずのワタシをコウモリが来た、と断罪していたのでしょうか。
嵩張り、重たいTNポッパーのキャストに手こずりつつ、次第に要領を掴んでキャスト距離がマトモになりました。
ぎこちないダブルホールキャストがビシッと決まり、TNポッパーが沖の流木の際ギリギリにフワリとキレイにターンオーバーして着水しました。
チャンス。
セオリー通りに波紋が完全に消えるまでジリジリしながら待ちます。
鋭く、短く、1回だけリトリーブ。
出ません。
波紋が完全に消えてから今度は2回。
バシャ!
いきなり水柱が立ちTNポッパーが消えました。
ほぼ同時にロッドに強い衝撃。
キーター!!
フライラインを手繰り寄せれば済む程度の引きであるのにも関わらず、折角大枚はたいて購入したディスクブレーキ搭載のフライリールです。楽しまなければ損です。無用に時間をかけて充分に引きを楽しんでリールを使って引き寄せたバスは30cm強。これ見よがしにバスを取り込みつつ、周囲を窺うとルアーマン達がこちらを見てます。ルアーでバスを狙っているアベック(カップル)の女性がカレシと思われる男性に声をかけたのが聞こえました。
「なあ、あの人、バス釣れてる!」
なんという喜び。なんという快感。ああ、気持ちイイ。この上ない法悦。
「そこのカノジヨ、そんな不甲斐ないカレシからボクに乗り換えませんか?」(妄想)
釣れたことの喜びか、品性下劣なワタシの虚栄心が満たされたことから来る快感か。
当の本人のワタシにも分かりません。
下衆な内心を押し殺しつつキャストを再開。
爆釣劇が開幕しました。
ほぼワンキャストワンフィッシュ状態が30分。
ルアーマン達は誰も釣れていません。
先程、汚物を見るかのようにワタシを一瞥していた周囲のルアーマン達の羨望の眼差しが、否、妬み嫉み僻みの凶暴な視線がワタシにザクザクと突き刺さります。
なんという喜び。なんというかいかn(以下略)
極め付けは25cmはあろうかという、巨大グレならぬ巨大ギル。素晴らしい引きでした。
色々と何かを満たされたワタシは後日TNポッパーを大量購入しました。写真のTNポッパーは僅かに手元に残るモノ。テツ西山氏亡き今、廃盤になってしまった現在、入手出来ません。今はフライボックスで深い眠りについています。ティムコさん、復活させて下さい。自作のモドキじゃイマイチなんです…。
※本来の目的であったチヌは未だ釣れておりません。あ、メッキとカマスは釣ったんですよ?引退していた海フライに今年、現役復帰の予定です…。ルアーですらトップでチヌ、釣ったことないんですけどね。